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潜在的「リスク」を未然に回避し、潜在的「利益」を顕在化させるビジネスツールをご提案します

リスクマネジメント事例

事例1 社外労働者受入企業側の偽装請負対策

 S社はY社より 請負契約 という形態でY社従業員をS社事業所にて就労させています。
昨今の偽装請負の規制強化の動きに鑑み、S社内にてこの請負契約の内容と就労実態について調査したところ、S社のY社従業員に対する 指揮命令関係 の存在など偽装請負を疑わせる実態が発覚したためその適正化にのり出します。

[ 関連法規 ] 民法632条/職業安定法44条/職業安定法施行規則4条/労働者派遣法40条 等

リスクの所在

(1) S社でのY社従業員の就労形態が

[ 1 ] 職業安定法施行規則4条の4要件
 a. 作業の完成について事業主としての財政上および法律上のすべての責任を負うこと
 b. 作業に従事する労働者を指揮監督するものであること
 c. 作業に従事する労働者に対し使用者として法律に規定されたすべての義務を負うこと
 d.. 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要となる簡易な工具を除く)もしくはその作業に必 要な材料資材を使用しまたは企画もしくは専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと

[ 2 ] 厚生労働省の区分基準
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/manual/dl/19.pdf

[ 3 ] 労働局のチェックリスト
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/haken/index.html

いずれに照らしても実態として「請負」と客観的に認められる可能性は低く、行政指導の対象 となる可能性が高い

(2)(1)により現在のS社内での社外労働者の受入れが 偽装請負 と認められた場合、S社Y社ともに労働者派遣法の諸規定の適用を受けることとなり、Y社が派遣法の「許可」を取得(あるいは「届出」)していないことから同法違反が成立するおそれがある。

(3) (2)派遣法違反は同時に職業安定法が禁止する 労働者供給事業 に該当し、派遣元(請負企業)であるY社のみならず、派遣先(受入企業)S社も行政指導・処分の対象となる。

(4) (2)により派遣先と擬制されたS社におけるY社従業員の派遣受入れ期間が、派遣法上の派遣可能期間を超える場合、その従業員に対する 直接雇用申込義務 が発生し、場合によっては直接雇用が強制されるおそれもある。

対策

S社における受入労働者の就労の性質上、純然たる適法な「請負」への転換が困難であると判断し、「労働者派遣法」の枠組みに沿った就労形態の適正化を進める。

(1) Y社よりの受入労働者の契約形態について、Y社に対し従来の請負契約から労働者派遣契約への変更を申入れる。
(2) 適法な受入れ(労働者派遣)が実現しない場合Y社に契約の解除を申入れ、適法な派遣事業会社よりあらたに派遣労働者を受入れる。
(3) S社内の派遣労働者受入れに対し労働者派遣法の諸規定を遵守する労務管理態勢を整備する。

効果

(1) 行政指導・処分の回避
・ 職業安定法44条違反  1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・ 労働者派遣法5・16条違反  1年以下の懲役または100万円以下の罰金

(2) 受入労働者の直接雇用回避
「偽装請負」が発覚し、就労形態が「派遣」と擬制された場合、派遣法の規定(労働者派遣法40条の4)がストレートに適用されるかどうかは不明ですが、上S社のケースでは不適正な請負契約での労働者受入期間が5年に及ぶ労働者も存在し、派遣法に照らせば派遣制限期間(3年)をオーバーすることとなり、その労働者が希望した場合直接雇用が強制される可能性も考えられます。 

ポイント・問題点

偽装請負問題は請負企業側がクローズアップされがちで、受入企業側のリスク感覚があまり高くないようです。
偽装請負の行政指導・処分の対象は何も請負企業側だけでなく、受入企業側もその対象となることに留意が必要です。 また当事例のように事前対策をとることなく、「偽装請負」が発覚してしまった場合、派遣法に照らしすでにその時点で派遣制限期間を超えて使用している労働者については、もはや「派遣」への切替えが認められず、「請負の適正化」か「直接雇用」のいずれかを選択しなければなりません。 

[ 偽装請負適正化の選択肢 ]
  発覚前 発覚後 備考
請負適正化 (+業務委託)
派遣 ○∼× 発覚時の労働者の受入期間 (*) が
(1)派遣制限期間以内なら ・・・「○」
(2)派遣制限期間を超えていれば ・・・「×」
直接雇用  

(*) 専門26業務 → 制限なし  専門26業務以外 → 3年 
【参考】 労働者派遣事業関係業務取扱要領「厚生労働省HP」

上例S社のように、受入企業側も漫然と受入れている外部労働者の就労形態につき、派遣法で強化された規制「受入労働者の直接雇用申込み義務」(40条の4)も視野に入れ、主体的に実態を把握しリスクを回避していくリスクマネジメントの必要性を示す事例と言えるでしょう。

今回の就労形態の適正化には「労働者派遣」という枠組みを採用し偽装状態を解消しましたが、この「派遣」の他にも(適法な)「請負」(業務委託)、「直接雇用」(長期雇用・短時間雇用)などいくつかの労働力調達ツールが用意されています。
しかしこれらはそれぞれ一長一短であり、使い勝手、コストパフォーマンス、リスクなどをふまえ、それぞれ企業の状況に照らし最も合理的な手法を選択していくことになります。 

例えば、今回の「派遣」の場合、直接雇用ケースに比べ雇用に付随する(社会保険料等)コスト負担は軽減されるものの一定範囲(労働時間や安全衛生など)での派遣先責任が残ります。また規制緩和により期間は延長されているものの一定の専門的業務を除いて派遣期間に制限(3年)が設けられており、3ヶ月間のクーリングオフなど労働力の安定供給という面で直接雇用に劣ります。 

また「請負」を採用する場合でも、実態として事例であげた区分基準など相当厳しい要件をクリアしなければ認められないハードルの高さがネックとなります。
労働者派遣法の規制緩和と併行した偽装請負に対する取締規制強化の動きを見る限り、「請負」という就労形態が合法として認められるケースはかなり限定的なものと思われます。
しかし、反対に「請負」形態がなじむ業種については、上の基準に沿って適正化を図ることで、「請負」の持つ「メリット」を最大限に活用すべきでしょう。

労務供給形態 メリット デメリット
請負 低コスト
労働力需給調整機能
厳格な基準のクリア
派遣 雇用関連コスト負担の回避
労働力需給調整機能
派遣期間の制限(3年)
一定の使用者責任
直接雇用 安定使用 雇用関連コストの負担

どの形態を選択するにせよ、会社と従業員(派遣元会社・請負会社等)の間には一定の契約関係が存在しこれに基き権利・義務関係が規律されています。
労働法は契約の「形式」ではなく「実態」を重視する考え方に立つため、それぞれの調達ツールの持つリスクの強弱を把握しその回避を踏まえ実態レベルでの適法性確保を図っていかなければなりません。

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