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会社も従業員も「損」をしていませんか?団塊世代の賃金設計

今年2007年から発生する団塊世代の大量リタイアとその雇用延長措置に合わせた高齢者の機能的な賃金設計が企業のコスト戦略上の課題となっています。
この賃金システムの構築は

  (1) 年金   (2) 給与 [ 賞与 ]   (3) 雇用保険からの給付

以上3つのツールを機能的に組み合わせ、雇用確保措置に伴う賃金コスト抑制を図りつつ、会社そして60歳以上の高齢従業員双方にとって合理的で納得性の高いシステムを作ることが趣旨です。
しかしこのインセンティブ機能付きの賃金設計はあくまで時限的なもので、中長期的にはやはり65歳定年を完全制度化・定着させ、さらに今度は70歳定年を視野に入れつつ企業が主体的に自力でコスト吸収を図れる仕組みを用意していかなければなりません。
多くの企業で「雇用期間延長」と「賃金減額」がトレードオフの関係となり、60歳以降の従業員の賃金減額という金銭的インセンティブの低下をいかに他のインセンティブで補いモチベーション確保とコストバランスの両立を図っていくかが本質的なテーマと言えます。

 

いずれにしても、ひとまず短期的には上の3つのツールをうまく組み合わせ、年金満額支給までの高齢従業員のモチベーションキープと労働力人口減少を背景にした雇用確保の両立を図っていくことが社会的要請でありかつ企業経営上の命題となっています。

そこで会社・高齢従業員双方にとってムダのない合理的な制度設計を実現するためには、上の3つのツールの持つそれぞれの「クセ」を認識しなければなりません。
この3つはすべてが同じベクトル上で仲良く機能してくれるわけではなく、さらにはこれに「残業代」「社会保険料」「所得税」などの要素を加味したきめ細かいそして高度なテクニックが要求されます。 
まずはその3者間のクセを確認しておきましょう。

3つの賃金設計ツール

(1) 年金  (2) 給与 [ 賞与 ]  (3) 雇用保険からの給付

【1】 (1)と(2)との間の支給調整
(1)+(2)が一定額を超えると(1)が減額調整(もしくは全額支給停止)されてしまう。

【2】 (2)「賞与」部分の考慮
(1)の支給調整には「賞与」も含まれ、前年の実績額(の1/12)が1年遅れで加算され調整対象とされる。
特に継続雇用後の初年度については現役時代の高額の「賞与」が60歳以降1年遅れでリアルタイムの賃金額に影響(いたずら)し年金額の減額幅が大きくなる(あるいは全額支給停止)傾向にあるため、設計上「賞与」の設定額にも注意が必要である。

【3】 (3)の受給要件
(3)が受給できるかどうかは60歳以降の給与額の60歳以前(現役時)の給与額に対する低下率次第で、一定率までの低下にとどまれば支給されない。

【4】 (1)(2)(3)の間の支給調整
(3)と(1)が受給できる時は(2)が一定の割合で減額調整されてしまう。

と実際に具体的な数字を入れてみないとイメージできませんが、上の3つを最大公約数的に集約した理想型は、

(1)が減額調整されず、(3)を最大限引き出せるような賃金設計 

ということになります。 
(注: 実際はリタイア後の1年は現役時代の高額の賞与の影響が残るため、比較的高額給与を受けていた従業員については年金の減額調整は避け難いのが実情です。 よって上の前半部分は「(1)の減額調整を最小限にとどめ、・・・」という表現が現実的かもしれません。)

この3つのツールの「クセ」を認識せず「給与」の絶対額の視点のみで設計すると、会社・従業員ともに知らないうちに「損」をしてしまうことになりかねません。 
つまりこういうことが起こり得ます。 事例を使ってその弊害を検証してみましょう。

【事例1】
S22年4月2日生まれの高齢従業員の60歳以降の賃金設計
(1) 年金額 (H19年4月∼H23年3月) 400,000円
(2) 給与額A (60歳以前) 400,000円
給与額B (60歳以降) 300,000円
賞与額 (60歳以前1年分) 840,000円

上のように3つの「クセ」を考慮せず60歳までの現役時代の給与を40万円から4分の3の水準である30万円に引き下げ賞与支給なし(残業なし・通勤手当なし)という賃金設計で再雇用制度を採用した場合の従業員給与額はどうなるかです。

まず、(1)と(2)の調整関係を見ていきましょう。
上【2】のとおり、前年の現役時代の賞与額が調整額の計算上考慮されてしまうことになり、上(1)(2)の合計額、つまり年金と給与を合わせた額は

85,000円 + 300,000円 + (840,000円 ÷ 12) = 455,000円 

となり、この額では(計算は省略します)年金が 全額「支給停止」 されてしまいます。 つまり年金は出ないことになります。
次に【3】の雇用保険からのインセンティブである給付金が受給できるかですが、答えは「NO」です。 
【3】で述べたとおり、この給付金の受給可否は、給与額B(60歳以後)の給与額A(60歳以前)に対する比率で決まってきます。
その比率は 75%未満 とされています。
したがってこの事例でいくと

給与額B/給与額A x 100 = 75(%)

すなわち75%未満の要件をクリアできず、結果雇用保険からの給付は1円も受給できないことになります。 結果この事例での高齢従業員の給与額(額面)は・・・

(1) 0円 + (2) 300,000円 + (3) 0円 = 300,000円 

となり従業員が納得していれば表面上何も問題ないように見えますが、思い出してみましょう。
上で説明した賃金設計の理想は・・・

(1)が減額調整されず、(3)を最大限引き出せるような賃金設計

でした。 ではこの事例ではどうなっているでしょう?

(1)は全額支給停止され、(3)を1円も引き出せない賃金設計

と「理想型」とは正反対、つまり会社にとっても従業員にとっても不合理な賃金設計になっているということが示唆されています。

では次に、例の3つのツールの「クセ」を考慮しテクニックを効かせた賃金設計を行った場合どうなるかを見てみましょう。

【事例2】

S22年4月2日生まれの高齢従業員の60歳以降の賃金設計
(1) 年金額 (H19年4月∼H22年3月) 85,000円
(2) 給与額A (60歳以前) 400,000円
給与額B (60歳以降) 240,000円
賞与額 (60歳以前1年分) 840,000円

条件は【事例1】と同じですが、異なるのは60歳以降の給与額です。 ここでは思い切って給与額を現役時代の60%まで引き下げ240,000円とします。 
まず年金額の減額調整の対象となる「年金+給与+前年の賞与(÷12)」の額は

85,000円 + 240,000円 + (840,000円 ÷ 12) = 395,000円 

となり、年金と給与間の調整額は

85,000円 − [(395,000円 − 280,000円) ÷ 2 ] = 27,500円 

[ ] 部分57,500円が支給停止され、27,500円の年金が支給されることになります。

次に雇用保険からの給付はどうかですが、

給与額B/給与額A x 100 = 60(%)

 

と要件の 75% を下回っており受給可能となります。 しかし年金側との支給調整が入り

(240,000円 x 15%)−(240,000円 x 6%) = 21,600円 

が雇用保険から支給されます。 (この場合右側部分「標準報酬月額x6%」相当額がカットされてしまいます。) 
結果【事例2】における高齢従業員が受ける(額面)給与額は

(1) 27,500円 + (2) 240,000円 + (3) 21,600円 = 289,100円 

となります。
ではここで社会保険料・所得税の控除を加味し各事例を整理してみましょう。

  事例1 事例1 備考
生年月日 昭和22年4月2日  
(1)年金額 85,000 85,000 H.19.4∼H.23.3
(2)給与額[ 60歳前 ] 400,000 400,000 前年賞与額 840,000
(2)給与額[ 60歳後 ] 300,000 240,000 賞与支給なし
[給与低下率] [75%] [60%] 要件:75%未満
調整後年金額 0 27,500  
(3)雇用保険の給付 0 21,600 支給調整後
( 給与額 ) ( 300,000 ) ( 289,100 ) 額面
社会保険料 [ * ] ▲37,908 ▲30,326 雇用+健保+厚生
所得税 ▲ 9,420 ▲ 6,180 扶養親族1名前提
( 控除後給与額 ) ( 252,672 ) ( 252,594 ) ( 差額 : 78 )
会社負担額(月)[ * ] 340,548 272,438 差額 : 68,110
会社負担額(年間) 4,086,436 3,269,261 差額 : 817,315

(単位:円)

従業員側の手取額はほぼ同じであるにもかかわらず、会社負担額は【事例−2】(=きっちり賃金設計をした場合)の方がはるかに少ない額ですんでいます。
言い換えれば、会社側は公的年金と雇用保険の給付というツールをうまく駆使し、従業員の同じ満足度を維持しつつ月額6万円(年間80万円)を超える賃金コストの軽減が図れるということになります。
逆に【事例1】(=何も考えずに設計)をとった場合、年間80万円にものぼるコストが社外に流出しているととらえることもできます。
しかもその行き先「国」です。 うまくやれば本来「国」から受けることができるはずの「年金」および「雇用保険からの給付」が【事例−1】の場合まるで支給されないわけです。
考えてみましょう、会社は毎月この「年金」と「雇用保険からの給付」の財源となっている「社会保険料」と「雇用保険料」を会社負担分として毎月国に納めています。
会社としてはここできっちり賃金設計することでこうした負担を少しでも回収していくコストマネジメントを働かせていかなくてはなりません。

● 会社がムダなコストを負担している
● しかもそのコストを国に払っている

私たちY’Sパートナーズはこうした不合理な弊害を排除する、言い換えれば外部からキャッシュを誘導する会社も従業員も「トク」する賃金設計をご提案させていただきます。

(注)
上の事例はあくまで簡易的な条件設定を前提にしており、企業様の実情により設計方法は多種・多様です。
実際の設計においては、こうした制度上の個別的視点だけではなく、会社全体のコスト戦略・従業員構成・従業員の職業・生活設計などを総合考慮した上バランスのとれたプランをご提案いたします。

[ * ] 社会保険料負担額計算根拠

  会社負担 従業員負担 備考
雇用保険料 9/1,000 6/1,000 H.19.4∼(改正後)
労災保険料 4.5/1,000 --  
健康保険料 41/1,000 41/1,000 政府管掌健保前提
介護保険料 6.15/1,000 6.15/1,000  
厚生年金保険料 73.21/1,000 73.21/1,000 ∼H.19.9
児童手当拠出金 1.3/1,000 -- H.19.4∼(改正後)
合 計 135.16/1,000 126.36/1,000  

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